研究概要 |
前年に引き続き、当該研究が対象とする時代におけるボーア戦争における言説およびそれに関する批評方法について、収集した資料を読み込んだ。日本英文学会や黒人研究の会などに参加し、研究者と情報交換を行った。後期には収集した資料を少しでも多く読むことを心がけた。 かねてから執筆を予定していたPolitics of Gender, Race and South African Space: Rereading OliveSchreiner's From Man to Man from a South African Perspectiveを完成させ『東京女子大学比較文化研究所紀要』(2008年1月)に発表した。この研究ではSchreinerがそれまでの英国読者を対象にした作品と異なり、南ア読者を対象にした「南アフリカの人種と性をめぐる言説」を展開していることに注目した。また、「ボーア戦争を巡る表象:Olive SchreinerとSol Plaatjeを中心に」というタイトルで黒人研究の会12月例会(京都)にて口頭発表を行い、ボーア戦争以前に行われていた大英帝国の同化政策CapeLiberalismを理想とする「リベラルな白人」Schreinerとアフリカ人知識人Plaatjeがそれぞれボーア人派と大英帝国派という異なる立場を取った背景を明らかにし、彼らが対象としていた読者層の違いから来る言説の差異を考察した。この口頭発表の一部を発展させ、論文Representing the"Other"to"Home"and English South African Self-fashioning in Olive Schreiner's"Eighteen-Ninety-Nine"として『英米文学評論』(2008年3月)にて、ボーア戦争勃発後に「故郷」の英国読者に向かって自分とその生まれ育った国の「他者」を擁護する中で形成される南ア人としての自己のあり方を考察した。尚この研究で培ったSchreinerに関する知見が『英語文学事典』の執筆に生かされている。
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