研究概要 |
3年間の研究期間の1年目に当たる平成17年度は、まずModern Painters第3巻(1856)"the pathetic fallacy"および"the moral of landscape"のくだりを中心としたテキスト読解によって、John Ruskinの「風景のモラル」に関する考察をおこない、彼のエコロジー的経済思想の意義を検討した。次に、The Defence of Guenevere, The Earthly Paradise等のWilliam Morrisの初期作品を主要テキストとし、ロマン派的環境思想の文脈の中でモリスの思想がどのように位置づけられるかを考察した。その上で、モリスの関わった環境保全の活動についての調査をおこなった。その活動を箇条書きにすると、 ・古建築物の保全:古建築物保護協会(SPAB)を1877年に創立 ・森林の保全:エピングの森の伐採計画への抗議 ・テムズ川流域の保全:水門番小屋改築、並木の伐採などに関してテムズ河川委員会に抗議 ・住環境保護団体との連携:カール協会、共有地保護協会、広告宣伝の濫用抑制のための国民協会 ・大気汚染への抗議 ということになるが、その中でも特に重要度が高い古建築物保護協会の活動に焦点を合わせ、その設立趣意書、年次大会報告書、また環境保全の問題にふれたモリスの講演、エッセイ、新聞への投書など、史料を用いて、モリスの環境保全の活動の実態を時系列に沿って整理し、次年度の実地調査の準備とした。 さらに、ロマン主義全般について、Blake, Wordsworth, Coleridge, Clareらイギリスロマン派の作品群を中心として、エコクリティシズムに貢献した主要な先行研究を再検討した。なお、本研究申請者が今年度担当した日本女子大学大学院文学研究科英文学専攻の「イギリス文化講義」において、講義の主題を「エコクリティシズムの源流をさぐる」として、それらの資料を扱った。
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