研究課題
基盤研究(C)
本研究は、イギリス19世紀の思想家ジョン・ラスキン(1819-1900)とウィリアム・モリス(1834-96)の著作に見られる環境思想に注目し、それが現代の人文学研究において重要な分野をなしているエコクリティシズム(ecocriticism)に果たした貢献について考察した。1年目(平成17年度)はイギリス・ロマン主義とラスキン、モリスの関連について、エコロジーの観点からの概念図を形成するために、主要な先行研究の検討を行い、2年目(平成18年度)は、ラスキンが1880年代に実践したユートピア的農業共同体であるセント・ジョージのギルドを問題にして、そこには環境についてのいかなる独特な理念が見られるか考察した。モリスについては、装飾芸術をめぐる一連の講演、エッセイをテキストとして、彼のデザイン思想のなかに重要なものとして含まれる環境思想を考察した。最終年度(平成19年度)においては、両者の環境をめぐる言説と実践について、それが現代のエコクリティシズム批評にいかなる影響を及ぼしているかについて、総括的な研究を行った。ラスキンのセント・ジョージのギルドの実践とその理念をつづった『フォルス・クラヴィゲラ』は、気候変動に産業化による汚染の影響を察知して警告を発した『19世紀の嵐雲』と共に、彼の多岐にわたる仕事の重要な側面として再評価することができる。モリスについても、一連の装飾芸術論にエコロジーの視点が不可分のものとして備わっていたこと、そしてその思想的源流として、モリスが青年期に身を浸したロマン派詩人たちの思索があったことを確認した。「ロマン派のエコロジー」の水脈は社会主義者モリスの環境保全運動の理念と実践においてラディカルな局面を迎えた。本研究によって、両者が現代のエコクリティシズムの重要な源泉であることが確証できた。
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広島日英協会々報 77
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The Japan-British Society of Hiroshima Quarterly No. 77
The Rising Generation Vol. 151
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The Journal of William Morris Studies Vol.14,no.4
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英語青年 151
The Journal of William Morris Studies Vol. 14, no. 4