1)19世紀後半期における文学研究の制度化のなかで、ゲーテ研究が中心的役割を果たした経緯について実証的研究をワイマールにおいて遂行した。このような大学における文献学の整備に関連して、ニーチェにおけるゲーテ受容の問題を取り上げた。ニーチェはバーゼル大学の古典文献学教授の職にあり、いわば大学の制度の内部から、当時の文献学の状況を批判している。古代と現代の関係をいかに再構築するかがニーチェの中心テーマであり、その文脈のなかでニーチェはゲーテにおける古代との生産的関わりに言及している。本研究では、ニーチェにおけるゲーテ関連の言説を整理・分析をし、新しい視点からニーチェのゲーテ受容に光を当てた。 2)20世紀初めに刊行された雑誌『ユーゲント』と『ジンプリチスムス』のなかで描かれているゲーテ像を、時代や流行との関連で分析し、ゲーテ受容史の新しい局面を開いた。このテーマについては、「韓国ドイツ語・ドイツ文学学会」の総会、及び韓国同徳女子大学の招待講演において研究発表を行った。特にワイマール共和国成立に関連して、ワイマールを象徴するゲーテが当時の政治状況のなかでどのように表象されていたのか、またヒットラー台頭のなかでのワイマールという問題領域でもしばしばゲーテが用いられており、それらについて分析を行った。特に1932年はゲーテ没100周年にあたり、この年の『ユーゲント』と『ジンプリチスムス』について集中的に分析した。
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