16世紀イングランドにおける商業演劇の興隆に、大学出身の知識人たちが果たした大きな役割は、これまで多くの研究者によって指摘されてきたものの、彼らが学生時代に親しんだ大学演劇それ自体についての研究はほとんど行われてこなかった。そこで本研究では、商業演劇の興隆に大きな影響を与えた劇作家ロバート・グリーンとクリストファー・マーロウに焦点を当て、(1) 彼らが関わっていた学寮内及び他学寮との緊密な交流関係を明らかにしつつ、(2) 彼らが1580年代前後のケンブリッジ大学における演劇文化に深く関わり、(3) 学生時代に築いた人脈を伝手にロンドン演劇界に繋がっていった様子や、(4) 学生演劇の文化をロンドンの大衆演劇文化に接ぎ木した様子を具体的に明らかにした。それによって、ケンブリッジ大学における学生演劇の文化史的・演劇史的な意義を、歴史的史料から再構築した。
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