研究課題
基盤研究(C)
本研究では、「文化の三角構造」と称されるモントリオールの独自性を背景に発祥し、英語系カナダのマルチカルチュラリズムとは異なる多民族の共存のあり方を模索するトランスカルチュラリズムと、その動向を映しとり1980年代にケベック文学において台頭した「移動文学」の動きに沿いながら、多元社会ケベックの様相とそこで模索されている新しいコスモポリタニズムについて考察を試みた。トランスカルチュラリズムの伸展にあたっては、ケベックの植民地的な歴史からくるマイノリティ性への共振が大きな要因になっていると推測された。「移動文学」とは、1980年代以降、仏語で活発な創作活動を始めた移民作家たちの文学であるが、イタリア系のM.ミコーネ、ユダヤ系のN.カタンやハイチ系のE.オリヴィエ、中国系のY.チェン、日系のA.シマザキなどの作品を分析し、そこに表れたトランスカルチュラルな表象を読み解いた。なお多元社会ケベックをめぐる様々な論争について分析し、トランスカルチュラリズムの興隆を促した要因と背景についても詳しく分析した。その研究成果はすでに、拙著『トランスカルチュラリズムと移動文学』(彩流社、2006年)と大阪市立大学に提出した博士論文『多元社会ケベックの移民と文学』(2008年)において発表した。また、21世紀に入りケベック社会は大きな岐路に立ち、トランスカルチュラリズムが広く浸透した結果、トランスミグランスや新世代文学に代表される新しいコスモポリタニズムが兆していることが明らかになった。このような研究成果の一部は、2008年7月にケベックシティで開催された世界仏語教授連盟(FIPF)の国際学会のシンポジウムにおいても発表した。
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阪南論集 人文・自然科学編 44巻(2号)(3月刊行確定)
Journal of Hannan University Vol. 44, No. 2
阪南論集 人文・自然科学編 43巻(2号)
ページ: 33-42
Journal of Hannan University Vol. 43, No. 2
阪南論集 人文・自然科学編 42巻(2号)
ページ: 49-60
Journal of Hannan University Vol. 42, No. 2
阪南論集 人文・自然科学編 41巻(1号)
ページ: 19-30
Journal of Hannan University Vol. 41, No. 1