本研究の課題であるエマソンと朱子の比較思想的研究を行うために、以下のような研究活動を行い、研究成果を得た。 1.勤務校の休業期間などを利用して上京し、東京大学総合図書館、東洋大学図書館などで、エマソン、朱子、王陽明、アメリカ超越主義、新儒教、中国思想、仏教(特に禅仏教)などに関する研究資料を収集し、またアメリカ文学・思想、イギリス文学・思想、ドイツ文学・思想、宗教学、中国思想、東洋思想研究者と、本研究課題と関連する問題について意見交換を行なった。 2.夏期休業中には、アメリカ合衆国ハーヴァード大学ワイドナー図書館、イエンチェン図書館、神学部図書館などに滞在し、エマソン、朱子、アメリカ超越主義、新儒教、中国思想などに関する研究資料を収集し、またエマソン研究で著名なLawrence Buellハーヴァード大学教授などアメリカ人エマソン研究者と、本研究課題に関連する問題についての意見交換、情報交換を行い、さらに研究論文を執筆した。 3.研究課題のなかでも、主として「天」と"Unity Universal"、「理」と"Reason"、「太極」と"The Over-Soul"、「格物致知」と"Correspondence"、「心」と"soul"、エマソン、朱子と道教、仏教などのテーマについて考察した。特に「心」と"soul"についての研究は論文にまとめ、『長野県短期大学紀要』に掲載した。エマソンの"soul"も朱子の「心」も、「神」や「理」としての超自然的なるものが内在し、作用を及ぼし、感覚的、自然的なるものに「変容」を遂げるばかりでなく、自然とも"Correspond"し、「応接」する場である点に共通点を持つと論じた。
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