昨年度までの研究によって、「近代化=西洋化」する日本の都市において、その象徴的な存在としてテクストの中に描き出されたのが、高等教育を受けた「女学生」であり、一方で近代都市として成長する東京が喚起した「エクゾティシズム」が女性表象にも少なからぬ影響を与え、「宿命の女」のような新しい女性表象が生まれたことが明らかになった。 今年度は、こうした女性表象を生み出した、男性側の想像力の変化についても考察を進め、「煩悶青年」たちの新しい価値観と、女性表象との関連を分析、考察した。その成果の一端が、JSPS国際学会等派遣事業の助成を受けた国際比較文学会第18回大会における学術発表"Degenerate Flaneuse: Contradictory Images of Urban New Women in Modernizing Tokyo"(8月3日、リオ・デ・ジャネイロ連邦大学)、及びウズベキスタンで開催された国際学術セミナー「文明のクロスロード5-ことば・文化・社会の様相-」における発表"Modernization and Literary Imagination: the Complex Image of Tokyo in Modern Japanese Literature"(3月17日、タシケント国立東洋学大学)である。また、これまでの研究をまとめたものとして、『テクストたちの旅程-移動と変容の中の文学-』(筑波大学文化批評研究会編、花書院、担当論文「読み替えられたイプセン-明治末の『ヨーン・ガブリエル・ボルクマン』」)と、『「新しい若者」の誕生-明治の煩悶青年と女学生』(単著、比較市民社会・国家・文化特別プロジェクト編、152頁、印刷中)を上梓した.
|