今年度は、この4年間の研究の集大成を成果としてまとめることにカを注ぎ、特に、博士論文の執筆に大部分の時間を費やした。その結果、当該論文「「西洋」を読み替えて-煩悶青年と女学生の明治文学-」は予備論文を提出することができた。なお、その一部は、『「新しい若者」の誕生--明治の煩悶青年と女学生』(2008年)として上梓した。 また、内外での成果発表としては、4月にロング・ビーチで開かれたアメリカ比較文学会のジェンダー・セクシュアリティー部会セッション"Dissidence/Dissdence:Comparative Sexualities at the Fin de Siecle"における研究発表、"Femme Fatale and Sapphic Desire:Japanese Women Writing Around 1910"と、12月にソウルの高麗大学校で開催された国際学術シンポジウム「日本研究の境界、そして越境」での研究発表「ポップカルチャーの領分:現代文学・文化と日本研究」を挙げることができる。いずれも、日本の近・現代文学が、近代化の矛盾や問題点を女性表象(ジェンダー表象)に反映させていることを指摘したものであり、内外の研究者との議論は、今後の研究の発展のために重要なものとなった。 なお、2009年3月にカザフスタンのカザフ国立大学(アルマトイ)及びユーラシア国立大学(アスタナ)で行われた講演会(「日本の近代化の矛盾するイメージ:女性表象をてがかりに」(3月19日、ユーラシア国立大学)、「現代文学・文化と日本社会」(3月24日、カザフ国立大学東洋学部)も、本研究の成果をもとにしたものであり、本研究が国際貢献にも役立ったと考えられる。
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