研究期間中2004、2006年上海、2004年台湾金門島、2003、2005、2006、2007、2008年北京で、研究者は現地調査を行うとともに、係る資料、書籍の収集と整理を行った。 05年度、当初の計画通りに研究者は身体論に関する研究を進めた。 研究者は当研究の具体的な身体観を「脳がつくる身体」、イメージする身体に見出した。 そのことによって、建国以前、月〓牌広告(カレンダー・ポスター)の「美人画」と、毛沢東時代の「鉄姑娘(鉄の娘)」との大きな隔たりには、当時のジェンダー(歴史的、社会的性差)を象徴的に表れていることが明らかとなった。 また現代アートがこうした「集団化した身体観」を突き崩す「等身大の身体」を表出することによって、従来のジェンダーを解消させ、新たな男女のあり方を提出していることが明らかになった。 そして中国現代アート作品の示す等身大の身体は、為政者、権力者のマシーン化した身体を収縮させる存在であることも指摘できた。 また北京「大山子(798)芸術区」など現代アートの中心地を調査することによって、その理念が、芸術と技術の新しい統合を目指したバウハウスの方向性や、労働者を国家の主人とする毛沢東思想に関係するであろうことも仮定できた。 最終年度である2008年度も当該研究計画に従って研究を進めた。 北京の798大山子芸術区が、当初の理想を忘れ、バブル経済に巻き込まれ、芸術区というよりは「商業地区」に変容していったことを批判的に報告した。 また研究期間中2007年2月に刊行した『中国現代アート』は、新しい章を加えた形で2008年1月韓国語版が出版された。 書評が「新京報」(中国)「art in Asia」(韓国)誌などに発表され、今後の国際的な受容が期待される。同書は埼玉大学「研究成果の状況」でS(当該分野において、優秀な水準にある)に選ばれている。
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