平成19(2007)年は、8月28〜30日にウランバートルで開催された日本モンゴル国交樹立35周年「モンゴルにおける日本年」記念第2回国際学術会議「モンゴル系民族の過去と現在」に出席し、文学芸術部会で「井上靖の『蒼き狼』をめぐる論争について」という題目の研究発表をモンゴル語で行った。この発表は、1960年代初頭に『群像』誌上で井上靖と大岡昇平との間で交わされたいわゆる「蒼き狼論争」の内容を分析したものであり、モンゴル語訳『蒼き狼』を引用しながら、モンゴル人の聴衆に初めてモンゴル語で解説紹介されたものである。発表のレジュメは会議資料集に掲載された(90-91頁)が、提出したペーパーは現在のところ未公刊である。この会議の概要については、11月24日に大阪大学箕面キャンパスで開催された日本モンゴル文学会秋期研究発表会において、「第2回国際学術会議『モンゴル系民族の過去と現在』参加報告-文学芸術部会を中心に」という題目で報告した。またこれとは別に、元モンゴル作家同盟議長で元東京外国語大学客員教授のD.ツェデブ博士(現モンゴル国立文化芸術大学学長)と池田大作氏(創価学会名誉会長)の対談集『友情の大草原-モンゴルと日本の語らい』(潮出版社)の書評を、『週刊読書人』(第2715号、2007年11月30日、3頁)と雑誌『潮』(2008年1月号、252頁)に発表した。この対談集には、本研究課題に関わるモンゴル文学の伝統と刷新に関する事項も多数含まれており、書評作成はきわめて有益な作業であった。 本年度は最終年度に当たるため、「研究成果報告書」を現在鋭意作成中である。また本年度も、ウランバートル在住の研究協力者D.ガルバータル教授(モンゴル国立大学)から、最近のいくつかの著書やモンゴル作家同盟機関誌『ツォグ』などの資料提供を受けた。
|