本年度は特にプロレタリア作家楊逵に注目し、一九三〇年代台湾および日本文壇における「大衆」に関する楊逵の言説を中心に、楊逵における「大衆」とは一体何であったのか、またその「大衆」はどのようなリテラシーを有していたのかという問題についての検討を進め、その成果を日本・アメリカ・中国・台湾・香港の学会において発表した。 まず、4月にはthe 57^<th> Annual Meeting of the Association for Asian Studiesにおいて口頭発表A Colonial Writer and His Conversion : A Case Study on Zhang Wenhuanを行い、植民地作家が「投稿」というシステムを通じて如何に日本文化圏に組み込まれて言ったか、という問題を論じた。 次に、6月には日本台湾学会第七回学術大会において1930代から40年代における台湾文学界の変容の諸相を「読者」「大衆」「文壇」をキーワードに「想像の「大衆」-プロレタリア作家楊逵の抱える矛盾と葛藤について」についての口頭発表を行った。 さらにこの問題を発展させ、8月には北京・中国社会科学院主催の「東亜現代文学中的戦争与歴史記録国際学術研討会」において「台湾新文学中的日本普羅文学理論受容-以普羅大衆文学為中心-」を発表、1930年代台湾におけるプロレタリア大衆文文学の受容について論じた。 一方、11月には台湾・国立清華大学主催の「後殖民地的東亜在地化思考:台湾文学国際学術研討会」および香港・嶺南大学主催の「東亜文化與中文文学」研討会において、台湾人読者のリテラシーの問題とそれに対する楊逵の方策を中心に「「為了台湾普羅大衆文学的確立-楊逵的一個嘗試」を発表した。 これら四つの国際学会への出席を通じ、各国の研究者と意見交換を行った。
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