本研究は、宋代を中心とする時期の中国における詩文集、特に別集(個人の詩文集)の編纂に関して、文学論および社会文化論の視点から考察するものであり、(1)宋代における別集の編纂状況の全体像の整理、(2)宋代における別集編纂を支える文学観の解明、(3)宋代の別集編纂を取り巻く社会的文化的背景の解明を目的として行われる。 本年度は、研究全体の基礎となる研究を進めるとともに、幾つかの発展的な問題に関する研究にも着手した。具体的には次の四点からなる研究を行った。 1宋代に編纂された別集に関する書誌学的・文献学的整理。 2宋代における別集編纂にあらわれた文学観に関する研究。特に、所謂「焚棄」「改定」といった行為を取り上げて考察し、「草稿」と「定本」の関係についての宋代文人の文学観を明らかにした。 3宋代における別集編纂、および別集に附された「注釈」にあらわれた文学観に関する研究。特に施元之等『施注蘇詩』、任淵『山谷詩集注』を取り上げて考察し、宋代文人の「生成論」的文学観を明らかにした。 4宋代における別集編纂を取り巻く社会的文化的背景に関する初歩的な研究。 上記四点のうち、特に3、4に重点を置いて研究を行った。
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