本研究は、宋代を中心とする時期の中国における詩文集、特に別集(個人の詩文集の編纂に関して、文学論および社会文化論の視点から考察を加えたものである。宋代には、文人たちが別集の編纂に自覚的に取り組むようになる。それに伴って、「編年」や「分類」といった別集の編纂方法が明確な形をとってあらわれてくる。加えて、別集に「注釈」を附すことも行われるようになる。宋代における別集の注釈に見られる特徴の一つとして、真蹟・石刻等の資料が活用されるようになったことが挙げられる。宋代の別集編纂をめぐるこれら一連の現象には、宋代に成立した新たな文学観、そして文学テクストを取り巻く新たな社会文化論的環境の反映を見て取ることができる
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