平成18年度本研究の概要は三つに分けられる。ひとつは、小説の映像化の問題を原作者および映像の製作者から直接に取材をすることができたことによる研究の進展である。筒井康隆氏へのインタビューと氏の小説「時をかける少女」を原作としたアニメーション作品の監督細田守氏との面談などである。ふたつは、「時をかける少女」の映像化を再度まとめて論考化(文庫の解説として発表)したことと、次年度の研究用に横溝正史のミステリーとその映像化についての調査である。資料は、所属研究機関によって横溝正史原作映画・テレビドラマのシナリオ購入が許可され、それを用いた研究のために映像資料等の検証を行っている。三つめは、原作小説・マンガ等のある映像作品のデータベース制作とアジア各地での日本の映像の受容調査であり、いずれも前年度より引き続き行っている作業である。前者は蓄積されたデータベースとしていずれ公開したいと考えている。また、後者はマイクロソフト社による助成研究の報告書としてもまとめている。さらに、平成19年の夏ごろには出版の予定である。以上、研究の三つに分けられる概要に加えて、本年度はさらに宝塚歌劇における原作と舞台劇との関係についても考察を向けることにした。このことについては、平成19年の夏までには編著として宝塚歌劇に関する書物が出版されて、公になる予定である。映像化の典型的な事例の啓蒙的な概括、原作者と映像製作者の意識、次年度への準備、データ整備などの三つの概要とさらにもう一つの舞台劇研究の面を加えて、「小説の映像化による物語構造の変容と時代との関係」の考察を展開させた。
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