(1)理論的な面では、小説やマンガなどを原作とした映像作品において、その原作との間でどのような物語構造の変容があったのかを考察する理論の構築を試みた。結果、構造主義的分析、物語受容論的分析、物語三項鼎立ドラマ生成的分析を重ねることで、物語構造の変容をフレキシブルに捉えることができるのではないかと仮説を立てた。こうした理論化は、従来の物語理論を複合化し、物語の転移と変容を考察するために必要な物語理論として構築したものである。 (2)資料的な面では、小説の映像化に関するデータを収集した。これはデータベース化を目標として、新聞テレビ欄やテレビ番組情報誌によるデータを収集したものである。 (3)包括的な資料として、20世紀のメディア史を、小年表としてまとめた。出版は20年の春の予定(前年度末に入稿・校正済み)。これは、映画、写真の歴史事項と文芸、図書の歴史事項を重ねて年表化することで、メディアの歴史を概観できるものとなった。(4)派生的な資料調査として、違法コピーによる映像文化の環太平洋地域での広がりを行い、まとめた。出版は20年の夏の予定(調査は前年度末に終了し、原稿入稿・校正済み)。この調査では、物語の異文化への越境伝播という現象には、違法コピーの流通も大きな要因ではないかという仮説が示されることになった。(5)映像化の領域に舞台芸術も含ませることで、物語構造の変容を分析する理論の可能性を検証した。
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