研究概要 |
多民族国家として知られるインド洋の島嶼国モーリシャス共称国の国民統合を目指し、その一手段として母国語(モーリシャス語)の地位確立に尽力してきたVirahsawmyの活動とそれに伴う国民の意識の変化を調査することを目的とした第一次調査を基盤とした。特にアメリカの同時多発テロ以後、チャゴシアン問題(DG島の米軍基地化により、島民が強制移住させられた問題)も関連し、国民の意識が英米から離れ、それに伴い言語政策にも変化が見られるのではないかとの仮定のもと、主にメディアの言語政策を現地の主要な新聞社(L'express,LeMauricien)とラジオ局(Radio1)の編集担当者にインタビュー、言語使用を通じて製作者側の政策の把握を目的とした。そこでは、文字を媒体とする新聞とラジオ・テレビの明確な相違があり、話し言葉として出発したクレオールを基盤とするモーリシャス語の文字化への問題点が明らかになった。 英仏の影響の点では、仏植民地時代の文化遺産が現存し、新聞、雑誌、書籍は相当な割合が仏語である。一方、教育の言語として英語を使用する条例が独立以後継続されており、私立学校以外はこの条例に従っている。但し、フランスの教会が所有する私立学校では、いわゆるドロップアウトの生徒たちのために、モーリシャス語を介して英語を教え始め、その成果が出始めている。 政治的な悶題は独立国であるモーリシャスの言語政策を変えるほどの影響は見られなかった。むしろ国際社会の中で経済的に必要な言語、とりわけ観光業のための英語・フランス語、インド企業とのIT共同開発のための英語がますます、主流になっていき、将来的にはシンガポール化していくのではないかというのが今回の結論である。
|