初年度は、二つの学会参加と、フィールドワーク、関連研究誌の発行と研究会の開催、資料蒐集・図書購入、台湾原住民文学の作家や研究者との意見交換などを精力的に行った。以下、項目別に概要を記す。【学会】6月5日に開催された日本台湾学会第7回大会で、「『他者』としての原住民族表象-日本人作家と台湾人作家は原住民族をいかに描いてきたか」において、研究協力者の孫大川氏と魚住悦子氏が座長をつとめ、本研究の周縁をなす、日本人や台湾人作家らいわゆる「他者」による原住民族表象について検討した。さらに、9月2日から4日まで花蓮市で開催された「山海の文学世界-台湾原住民族文学国際研討会」に参加した。これは、台湾原住民文学に関する世界初の国際学会であった。孫大川氏は、この国際学会の主催者であったが、本研究の研究協力者は、他に魚住悦子氏が「シャマン・ラポガンの文学における海と山」を発表、浦忠成氏と〓相揚氏はコメンテーターをつとめた。本研究代表者の下村は、「日本における台湾原住民文学研究-翻訳・出版と書評を中心に-」と題して報告した。【研究会】ツォウ族のエリートであった高一生に関する研究誌『高一生(矢多一生)研究』を7月5日に創刊し、第3号まで出した。【講演】12月27日、台中市にある静宜大学で孫大川氏と共に「山海的文学相逢-台湾原住民文学的日訳與研究」と題して話した。【フィールドワーク】魚住悦子氏と共に『サヨンの鐘』の舞台である南澳(8月31日-9月1日)、霧社・春陽社(9月5日-7日)を調査した。この間、孫大川氏、浦忠成氏、〓相揚氏、魚住悦子氏とは頻繁に情報の交換を行い、さらに花蓮市での国際学会では、陳英雄、胡徳夫、リポック、ワリス・ノカン、シャマン・ラポガン、リムイ・アキ、マサオ・アキ、パイツ・ムクナナ、ブクン、パタイ、ネコッ・ソクルマン、イパオ、アダオ、黒帯・巴代ほかに会っている。【資料蒐集・図書購入】図書は主に台北市・南天書局で購入した。
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