1 海外に赴き、現地の関係者の協力も得ながら、日本では入手困難なポリネシア諸語の先行研究文献及び分析のための各種言語データの収集を行った。今回の研究の最も主要な対象言語のうち三つの言語、ハワイ語、マオリ語、タヒチ語の先行研究文献、言語分析のデータとなる文献、その他各種の言語データを多数収集するとともに、仏領ポリネシア内の他の言語、マンガレヴァ語、マルケサス語などの貴重な言語データも収集し、先行研究文献及び分析用データを蓄積することができた。 2 国内大学図書館に赴き、ポリネシア諸言語の先行研究文献、辞書等を閲覧し、その中から、方向詞に関係した部分を吟味し、必要と思われる部分を複写し持ち帰った。ツアモツ語、西フツナ・アニワ語、トケラウ語、トンガ語、ナヌメア語、東フツナ語の先行研究文献における方向詞の記述に関するデータを入手することができた。 3 収集したデータを言語別に取り込み、分析しやすい単位に分解し整理するとともに、個々のデータの語彙的分析、意味的分析及び、文法的分析に着手した。この分析は今回まとまった量のデータが確保できたタヒチ語から始めた。 4 上記3で分析が済んだデータに含まれる方向詞の用例データを分類整理するために、分類の暫定的な基準をたてた。まず用法の大きな分類として、1)典型的な用法である空間的用法、2)それと密接に関係する時間的用法、3)程度や変異など空間や時間以外のものを表わす特殊用法の三つに分け、特殊用法についてはさらに細分類を模索することとした。また、これらの三つの用法にまたがるもう一つの基準として、i)動的な方向性を示す方向的用法とii)静的な位置付けを示す位置的用法との二つの分類に従って分類を試みることとした。
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