隣国コンゴ民主共和国での政情不安から自粛していたウガンダ西部のブンディブジョ州において、言語調査を実施した。ブンディブギョ州にはルーエンゾリ山塊が南北に走っており、山岳部にはコンジョ族が、そして平地部にはブィシ族、アンバ族、ツァ族(ピグミー)、トーロ族が住んでいる。トーロ族は主として東のフォート・ポータル州の住人であるが、ブンディブジョ州はかつてのトーロ王国の一部であり、ブンディブジョ州にも住んでいるのである。さらにセムリキ川の平原部には牧畜民トゥク族が住んでいるが、彼らの言語はトーロ語である。 一般にブンディブジョ州の言語と民族は混乱している。ブィシ族は、誤ってアンバ族の一部とされることが多いが、この二つの民族は、まったく別の言語を話している。ブィシ語は、母音、声調ともバンツー祖語的性格を強く残している。例えば「頭」はトーロ語、コンジョ語では、それぞれomutwe、omutweであるが、ブィシ語ではmutueである。トーロ語、コンジョ語で半母音であるものがブィシ語ではuと本来の母音と声調を保持している。アンバ語は、系統としては同じくバンツー系であるが、ブィシ語、トーロ語、コンジョ語とは大きく異なっている。そして奇妙なことにツァ族(ピグミー)の言語とほぼ同じなのである。ただし、ツァ語には、しばしばアンバ語にはない語彙項目が現れ、これらは、国境を越えコンゴ側のイツーリに話されているビラ語のものである可能性がある。
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