ウガンダ国フォート・ポータル州においてトーロ語の調査を継続した。本研究による調査は今年度が最後の年となるため、トーロ語の調査を完遂させることと、次回調査に向けて新たな調査対象言語を確定することを主な目標として調査を行った。トーロ語に関しては語彙集A Rutooro Vovabularyを完成させた。この語彙集はたんにトーロ語を見出しとして掲げるのではなく、例えば名詞の場合、1)単独で発音した場合、2)「一つの」という数形容詞があとに付いた場合、3)「これは〜である」というふうに述語名詞になった場合、4)「これは私の〜である」というふうに所有形容詞があとに付いて述語名詞になった場合、5)「これはどんな〜ですか」というふうに「どんな」という疑問形容詞があとに付いて述語名詞になった場合という五つの異なった統語的コンテキストにおいて発音を示してある。そうすることによって、語彙的声調を失ったトーロ語の文法的声調を十分示すことができる。またこの点をまとめて「アフリカの言語は易しいか-バンツー系トーロ語の統語構造と声調の係わりにおいて検証する-」と題する論文を書いた。次回以降の調査対象言語としては、トーロ語の北に話されるニョロ語とトーロ語の西に話されるブイシ語を考えている。ニョロ語は全般的に見てトーロ語とよく似ているが声調体系が異なる点が興味深い。他方、ブィシ語はトーロ語には似ず、むしろバンツー祖語的性格を強く残している点が興味深い。
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