研究課題
基盤研究(C)
本研究は従来議論されることのなかった日本語のパーフェクトの構成原理を参照時の設定に着目して明らかにすることを目的とするものである。そのためにまず、多様なアスペクトを表すという意味で雑多な意味機能を持つ「シテイル」のデータを自然な会話に重点を置いて収集・整理し、談話世界の構成に本質的に関係する機能を持つ「シテイル」の用例を抽出し、それらを[シタ]の用例と比較しながら、「シテイル」を含む事象のタイプ、および、その事象が関係付けられる参照時のタイプに重点を置いて精査した。こうして得られたデータの分析結果から、(i)シタ系パーフェクトは発話時点に完了した事象、したがって、話者の直接的体験・主観領域に属する事象の記述を担う。一方、(ii)シテイル系パーフェクトは出来事時=発話時における直接体験した事象とは別の時系列に属する世界における出来事を表し、(iii)「今/午前9時」などの直示表現といわれる時間副詞とは共起せず、特定の参照時が明示されない場合が多い、という一般化を得た。さらに、この一般化に基づいて(a)(b)(c)の結論が導かれた:(a)日本語のシテイル系パーフェクトは、現実の文脈・世界・状況や話者とは別の文脈・世界・状況や話者に基づいて解釈される事象を導入する意味特性を持つ。したがって、(b)シテイル系パーフェクトは、当該事象が現実文脈に含まれておらず、かつ、先行発話と関連性を有し、整合的である場合に認可される。(c)(b)の成立には、「シテイル」が有する未完了性と時間的不定性の意味素性が必要不可欠である
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『神戸大学文学部紀要』 35
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Bulletin of the Faculty of Letters Kobe University No. 35
Fourth International Workshop on Generative Approaches to the Lexicon (with CD-ROM) Bouillon, Pierrette and Kyoto Kanzaki (eds.)
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