17年度から始めた臨地調査のひとまずの区切りの年度として、高知・愛媛・香川・徳島県内の7地点と、参考となる四国地方以外の1地点の計8地点の調査を実施した。調査実施順に示す。 (1)高知県幡多郡黒潮町(2)香川県小豆郡小豆島町・土庄町(3)鳥取県鳥取市(4)愛媛県松山市(5)高知県幡多郡大月町(6)香川県東かがわ市(7)高知県吾川郡仁淀川町(8)徳島県名西郡神山町 17〜19年度の調査地点を合計すると、愛媛県5地点、香川県4地点、徳島県4地点、高知県5地点、岡山県1地点、鳥取県1地点、の計20地点となった。当初の目標には到達し、しかも四国に隣接する中国地方から2地点を加えることにより、四国のまとまりをより客観的に捉えることができるのではないかと考える。できれば、最終年度に中国地方の他の3県でも実施したい。 (1)と(5)には調査項目の全般において、失意・失態表現を例外として、際だった特徴は指摘しにくい。昨年度から市町村誌・地元で発行された語彙資料にも注目しているが、(5)の柏島に「バッタリヤマコ」という語が記録されており、高知の特徴である「バッタリ」と新事象「ヤマッタ」との関係に重要な示唆を与える資料と判断した。(7)になると、同じ高知県でありながら、愛媛県との関連が深く、「〜もあれ〜」表現が活発で形態面でも近似している。最終年度に県境をはさんだ愛媛県側の山間部で調査を行えれば、(7)との比較を通して、(1)(5)よりもはるかに共通性の高いことを確認できるだろう。 (2)と(6)は同じ香川県内でも、かなり異なることがわかった。(2)は海路の違いによって近畿・中国・四国の影響を受け、感動表現においては他県には見られない語が認められた。瀬戸内海の島である特徴が反映したものと考える。(6)はむしろ、徳島県と近似しており、香川県西部の活発な「〜もあれ〜」表現は影を潜めてしまう。(8)は徳島県の中央に位置する地点として選定したが、すでに実施済みの西部の山間部西祖谷山村に繋がる特色は見出せなかった。東の徳島市との関係が強いと判断する。
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