1.日本語のモダリティの通時的研究 本研究により、日本語において終助詞のような談話機能的なモダリティが英語よりも発達しているのは、多義性の解消によって日本語が文脈に依存する言語であることに起因していることが明らかとなった。また、日本語のモダリティの文法化は普遍的一方向性と相反していることも示唆された。さらに、epistemic用法を中心的に担うモダリティ体系が多音節化と狭義化を通して多義性を解消していき、deonticとepistemicの明確な役割分担ができあがったとする仮説を提示し検証した。なぜ日本語のモダリティ体系がepistemicを中心とした体系なのか、といった問題を解明する必要があるため、通時的な文献資料を通して中古語のモダリティ体系の分析を始めた。 2.認知言語学的観点からのモダリティ研究のレビュー 認知言語学的な観点からのモダリティ研究にはどのような先行研究があるのかを調べた。また、モダリティの文法化に働いている原理やその背後にある認知メカニズムの普遍性を追究すべく、既存する文法化のモデルや仮説の検証を行った。 3.言語類型論的観点からのモダリティ分析 モダリティの文法化現象の考察においては、日本語と英語(類型論的に大きく異なる特徴を有する言語)との対照にとどまらず、類型論的に非常に類似した他言語(中国語のような表面的な類似性ゆえに本質的な相違点が把握し難い言語)との対照を通じて、日本語のモダリティの文法化の特異性を相対化させていった。 以上の内容を研究するため、6月に研究会を実施した。また、研究発表や論文、書籍などを通じて公開した(裏面参照)。1年次の成果は報告書としてまとめる予定である。
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