研究概要 |
本年度における研究実績は(1)文献による基礎研究および(2)新データの収集およびパイロット分析である. 第1点については、ジャンル分析,異文化コミュニケーション論,および認知モデルについての知見を異文化語用論への方法論としてまとめあげるための基礎資料の収集およびその分析・考察を行った.特定ジャンルの談話コミュニケーション研究については,ビジネス,医療,法廷,育児などの分野においてすでに成果がみられるが,高等教育という分野での談話分析の日英比較研究は非常に限定的であり,特に一対一の対人コミュニケーションを包括的に扱った研究は皆無に等しいことがわかった.認知モデルについての研究は,認知意味論分野に方法論の示唆を見いだした.事象をどのように把握し論述するかについての認知言語学的試論は,雑誌論文「諺の認知構造-他動性の日英比較」にまとめた.他動性をはじめとする事象把握に加え,隠喩や換喩に基づくイメージスキーマおよびプロトタイプなどを考慮しながら,後述する半構造化インタビューデータの分析手法として次年度研究に導入する予定である.第2点については、すでに収集済みの一次データ(アカデミック・チュートリアルの録画および録音)を補足する目的で,(a)英国および日本におけるアンケート調査,(b)日本人留学生への半構造化インタビューを実施した.現在,収集されたデータの文字化および計量化を行っているところである.文字化完了資料については,日本人留学生の沈黙に対しての質的パイロット分析を行い,沈黙の長さは単に語学の低熟達度を反映しているばかりではなく,当該ジャンルの社会的前提に対する理解度の低さを表していることを指摘した. 尚、上記の成果は、異文化コミュニケーション学会(東京),アジア英語教育学会(北京)における研究発表,およびデンマーク・ロスキル大学における招待講演において公表した。
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