研究概要 |
本年度における研究実績は(1)文献による基礎研究(2)新データの収集、パイロット分析(3)理論化の着手である. 前年度に得られたデータを補完すべく、英国に学ぶ日本人学生7名に対する半構造化インタビューを実施した。またそのうち2名については、英語による継続的インタビューを行い、時間軸にみられる被験者の意識変化を調査した。これらのデータは全て文字化し、日本語インタビューデータについては、英語への翻訳も行った。 ジャンル分析の結果をふまえて、アカデミック・ジャンルに特化した異文化接触時の対人コミュニケーション研究を行った。対人コミュニケーションの研究と並行し、その成果を充分に咀嚼しながら、理論的説明原理としての認知モデル研究に着手した。被験者の談話にあらわれる言語現象・非言語現象は、その背後で働いている社会的・文化的・歴史的前提を表出すると同時に、相互行為として刻々変化する談話コンテクストによって構築・再構築されているという観点に立ち、認知意味論(隠喩概念化、カテゴリー論、プロトタイプ論、による鍵概念の特定)、批判的談話分析(イデオロギーやアイデンティティの特定)、異文化コミュニケーション論(コミュニケーション参与者の行為、方略、心理にかかわる文化的要因の特定)、ブルデューによる実践理論などを援用しながら理論化を試みた。これらの研究を通して、異文化語用論への新たな方法論としての基礎構築を行った。 尚、上記の成果は、語用論と言語教育学会(ハワイ大学),における研究発表,およびアメリカ合衆国・テキサスA&M大学、北テキサス大学、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学における招待講演において公表した。
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