研究概要 |
本年度における研究実績は(1)新データの収集,パイロット分析,(2)理論化,(3)研究結果のまとめと執筆である。 前年度に得られたデータを補完すべく,英国に学ぶ日本人学生数名に対する半構造化インタビューを実施した。これらのデータは全て文字化し,日本語インタビューデータについては,英語への翻訳も行った。インタビューデータからは,日本人留学生が内包する日本型教育システム,社会文化的前提が読み取れ,それらを加味した認知モデルの構築が可能となる。授業のビデオ録画,観察記録回顧インタビューから得られた知見と統合し,より精度の高い認知モデルを提案した。このモデルに従って,教師と学生の談話データの新たな側面を示すことが出来た。特に日本人留学生の談話に頻出する「沈黙」の意味について,日本人学生独自の認知モデルがあることを示した。これはいわゆる「言語化重視型」の欧米教育システムの認知モデルとは対極にあるが,それが固定的なモデルなのではなく,異文化コミュニケーションとしての教室談話の「今-ここ」で構築・再構築される動的なプロセスをはらむことも確認された。これらは,内外の学会や研究会などで発表した。平成19年7月国際語用論学会(ヨーテボリ・スゥエーデン),平成19年9月英国応用言語学会(エジンバラ・連合王国),平成19年11月大学英語教育学会談話行動研究会(東京)。 本基盤研究3年間において収集したデータのコーパス化を行なうと同時に,分析結果をまとめた。これらの結果は,研究報告書に収録し印刷製本の上,配付する予定である。 また,これらの研究成果公表をふまえ,書籍として出版を計画している(John Benjamins 社刊行の Pragmatics and Beyond New Series を予定)。
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