本研究は、原理とパラメータの理論に基づいた研究であるが、本年度は、研究目的4点のうち、次の2点に重点をおいて研究を進めた。まず、極小プログラムに基づき、派生のコストの概念を言語獲得の観点から明確にする。次に、特定の語彙項目の諸特性が「いつ」「どのように」獲得されるのか明らかにする。具体的には、以下の4点について成果をあげることができた。 1.昨年度、国立国語研究所から公刊された男児1名の自然発話データ(2;0〜3;11)、研究代表者が収集し、すでに文字化、コンピュータ入力化が終了している女児1名の自然発話データ(1;4〜3;1)および男児1名の発話データ(3;2〜4;11)から関係節構造に関するデータを分析し、英語を母語としている子どもより日本語を母語にしている子どもの方が、早期から関係節を使うことを明らかにした。この結果を極小プログラムの観点から検討し、その成果を2006年6月に開催された関西言語学会で口頭発表した(招聘発表)。また、その内容は論文にまとめKLS27(2007)に掲載された。 2.上記1の日本語関係節の縦断的データを詳細に分析した。その結果を論文にまとめ、金城学院大学論集人文学編3.2(2007)に掲載した。 3.国立国語研究所から公刊された男児1名の自然発話データ(2;0〜3;11)と、研究代表者が収集した女児1名(1;4〜3;1)および男児1名の自然発話データ(3;2〜4;11)に関して、難易形態素、感覚形態素、可能形態素、使役形態素を含む発話を取り出し、上昇構文かコントロール構文かという観点を中心に整理をした。現在、この結果に基づいた理論的考察を進行させている。 4.2002年11月より収集開始した日本男児1名のデータを2006年度も月1回のペースで12セッションおよび5歳の誕生日に1セッション合計13セッション分収集した。(この件については、相手方の同意を得て、プライバシーには十分配慮している。)
|