本研究は、主として以下の5点について成果を挙げた。 1.日本語関係節と英語関係節の縦断的および実験的研究の比較考察を通じ、極小プログラムにおける派生のコストの概念を詳細に検討した。具体的には、従来、一言語内においてのみ妥当とされていた派生のコストの概念を、複数の言語において比較する可能性について検討し、派生の出発点となる同一「算えあげ(Numeration)」の条件を音声面に関して緩和することにより可能であると結論づけた。その内容は、Harada(2007)bおよびHarada(2008)として公刊した。 2.日本児3名の関係節の縦断的データを詳細に分析し、その結果をHarada(2007)aとして公刊した。 3.日本児3名の自然発話データに関して難易形態素、知覚形態素、可能形態素、使役形態素を含む発話を取り出し、上昇構文かコントロール構文かという観点を中心に整理をした。この結果に基づいて現在理論的考察を進行させている。 4.日本児3名の縦断的データより、主として「…用言+名詞」の形式をした名詞修飾表現を整理し、本研究『平成17年度〜平成19年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書』で公開した。 5.2002年11月より収集開始した日本男児1名のデータを2005年度、2006年度の2年間月1回1時間程度合計25セッション収集した。また、2007年5月より新たに日本女児1名のデータを月1回1時間および日時を決めず、子どもがよくしゃべっている機会をとらえ1ヶ月に累計1時間程度のデータを収集した。今年度3月末までに11セッションのデータを収集、9セッション分は、文字化およびコンピュータへの打ち込みを終了した。
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