研究概要 |
本研究は、同系統の言語間・同一言語の地域方言間・同一地域内の話者間に見られる変異、および、現在の変異を現出せしめている通時的変化の解明を目指す。今年度に行なった作業は、次に述べるように3類にまとめられる。 1.オリヤ語(インド東部で話される印欧語)の資料収集・整理。インド・オリッサ州にて、2005年12月〜2006年1月の1ヶ月弱、2人の話者と毎日4〜8時間の面接を持った。現地調査を補う形で、日本国内において、インターネット・ホームページ上のテキストや、現地で入手した出版物から実例を採取した。これらの作業により、オリヤ語の文法 -特に、使役関係、アスペクト、テンス、モダリティの表出方法- に関する資料を集積した。 2.日本語の資料収集・整理。通年行った。岡山方言について、多人数の話者を対象としてアンケート調査を行ない、回答を統計的に解析すべく整理した。また、小規模の談話採集、面接を行った。これらに加えて、対象地域を限定せず、インターネット・ホームページや出版物中のテキストからも実例を採取した。上述の作業によって、アスペクト、モダリティの表出方法に関し、標準語と岡山方言(ないし、より広く、西日本方言)の間にある構造的相違や、岡山方言内部における文法構造の個人間変異と年代的変化のありかたの一端を明らかにした。 3.理論的考察と成果発表。上記作業1,2で得たオリヤ語と日本語の資料について、言語の変異や通時的変化に関して、理論的位置付けを考察した。また、同資料を、研究文献からの他言語に関する資料と対照させ、両言語の類型的性格を検討した。研究成果は、2編の論文と1件の学会口頭発表として発表した。
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