研究概要 |
本研究の目標は、文法に関して、同系統の言語間・同一言語の地域方言間・同一地域内の話者間に見られる変異の状況を解明すること、および、これを主な足掛かりにして、現在みられる変異をもたらしている通時的変容の過程を解明することである。平成19年度に行なった作業は、次に述べるように3類にまとめられる。 1.オリヤ語(インド東部で話される印欧語)の資料収集・整理。インド・オリッサ州にて、2008年2月〜3月の約1ケ月の期間、毎日4〜8時間ずつ2人の話者と面接を持った。現地調査を補うべく、日本国内において、インターネット・サイト上のテキストや、現地入手の出版物から実例を採取した。これらの作業によって、オリヤ語の文法-特に、使役関係の表現方法-に関する資料を集積した。 2.日本語の資料収集・整理。通年行った。岡山方言について、多人数(約800名)の話者を対象としてアンケート調査を行ない、回答を統計的に整理した。これを、面接による小規模の調査で補った。また、対象地域を広く取り、インターネット・サイト上などのテキストから実例を採取した。これらの作業では、題材として、主に、補助動詞「おく」の用法を取り上げた。岡山方言内部における個人間変異と通時的変化の一端を詳らかにし、また、日本語諸方言間にみとめられる構造的相違や傾向的差異を数点指摘した。 3.理論的考察と成果発表。上記の作業1,2によって明らかになったオリヤ語・日本語の諸現象について、動機付けとなる要因を推定することによって、説明を試みた。また、両言語を(既存の研究文献をとおして様子が伺える)他言語と対照させ、両言語の類型的性格を考察した。
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