研究概要 |
本研究は,台湾総督府が植民地統治した最初期において,台湾人の統治上必要としたであろう「言語政策」につき,従来学務部関係資料にのみ焦点が当てられていたのに対し,看過されてきた警務関係者編纂資料を調査分析することが,言語政策の全容を解明するために必要であるという立場に立って進めてきたものである。 その結果,これまで学務部編纂による資料はほぼ収集できていた上に,軍隊、憲兵用,警察用に編纂された『警察会話編』『台湾土語』ほか,張良澤氏が紹介した(「台湾語とは?-台湾語著作書誌を兼ねて-」『外国語教育論集』1984筑波大学外国語センター)明治期から大正期の資料をほぼ収集できた。 膨大な資料であるため限られた資料となったが,データベース化をし,比較分析を進め,科研費報告書『台湾総督府学務部及び警務関係者編纂初期日本語資料の基礎的研究』に一部紹介している。また,新資料として発見した『軍隊憲兵用台湾語』『台湾語』と『新目本語言集』を比較してみると,一部両者が重なることが判明し,このことより,学務部と憲兵、軍隊との関わりの深さを指摘することができた。これは,台湾における最も早い時期に日本語教育がなされたことが記される陸軍歩兵大佐福嶋安正著『淡水新政記』より,「通訳官」の果たした役割が大きかったこと,そしてそれが憲兵、軍隊などの警務関係者が統治上の必要から噛んでいく出発となったことが明確になってきたのである。 今後,学務系と警務系を詳細に比較し,台湾統治上両者がどのようにかかわりあいながら,日本語教育が展開されたか検討をさらに進めていく必要のあるところである。
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