本年度は、当該研究課題の最終年度に当たり、成果のとりまとめをするべく、調査の補足と、成果の公表を積極的に行った。文献調査は、東寺・石山寺・高山寺の諸寺院経蔵における、平安時代及びこれに連なる鎌倉時代の仏書漢字仮名交じり文資料の原本調査を行い、特に、勧修寺法務寛信撰『類秘抄』の諸伝本に注目し、重点的に原本調査に従事し、その書記史上の特性を明らかにした。 さらに、仏書と俗書との比較調査として、前田本『江談抄』の原本調査も行い、その書記史、文体史上の位置を考察した。上記については、いずれも研究成果として公表が確定している。 また、成果のとりまとめとして、本年度に行った研究発表は、以下のとおりである。 (1)「平安時代の仏書漢文及び仮名交じり文について」(平成19年9月15日、国際シンポジウム「東アジアの視野における日本学研究」、於山東大学外国語学院・中国) (2)「僧侶の申文ー聖教類の諸文体ー」(平成19年12月7日、慶應義塾大学中世文学研究会講演) (3)「変体漢文解読の方法と実際ー変体漢文訓点資料の諸相ー」(韓日国際ワークショップ「古代韓日の言語文化比較研究」、平成20年2月21日ソウル大学校奎章閣韓国学研究院・大韓民国) 特に、(1)は中国、(2)は大韓民国で開催された、国際学会における公表であり、本研究課題の成果を海外に向けて発信することができたことも有意義であった。このように海外で発表した結果、同じ漢字文化圏における韓国語の吏読について、「漢字交じり」の書記様式の共通性と異なりとを具体的に確認することができ、国際的視野を獲得することができたことも重要な収穫の一つである。
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