琉球方言は、日本本土方言と早く分離して古い時代の日本語の痕跡を残す、姉妹語に近い大方言として扱われることが多かったが、新しい変化と思われる部分で実は思いの外九州方言と連続するところが多い。九州方言、琉球方言を正当に評価するためにも、その特異性を強調するだけでなく、連続面にもっと注意を払うべきではないかとしてはじめた研究で、研究代表者は、『おもろさうし』に見える「おわる」という敬語の成立を考察し、その言語変化を推し進めたエネルギーは、鹿児島から熊本、長崎、対馬など九州西海岸にも同じように強く見られることを指摘した。いわゆるラ行五段化の強い指向であるが、この傾向は江戸時代の対馬にも見られる。そのことを示す『交隣須知』などの朝鮮語学習書の資料的価値を明らかにするために、関連の深い方言書『日暮芥草』の地道な解読作業を引き続きすすめた。非常に大部な資料で、全部を解読し終えるにはなお相当の時日を要するものと思われる。『おもろさうし』による琉球方言の研究に資するために、現地の現在琉球方言の調査を研究分担者と協力して実施したが、非常に有益であった。また江戸時代の長崎方言で書かれた『長崎在所子供訛』を見出すなど資料収集も引き続き進めている。
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