程度副詞は、被修飾句の状態の程度的側面を修飾するものである。したがって、程度修飾の典型例は形容詞修飾である。本研究では、形容詞の表す状態程度を修飾する副詞を程度副詞とする。 程度副詞の中には、「かなり食べる」の「かなり」のように動作の量の程度を修飾するものや、「学生が少し参加する」の「少し」のように名詞句の指示対象の量の程度を修飾するものがある。これらの副詞は「かなり大きい」「少し小さい」のように形容詞も修飾する。一方、「とても」や「非常に」は、「とても/非常に大きい」のように形容詞は修飾するが、「とても食べる」「学生が非常に参加する」が不自然になるように、量程度修飾ができない。程度副詞は、量程度修飾の可能性に基づいて、「かなり」「少し」のような副詞と、「とても」「非常に」のような副詞に分類することができる。 また、「完全に等しい」「ほぼ等しい」は自然だが、「とても/かなり等しい」は不自然である。「太郎の背の高さと花子の背の高さは等しくもないし等しくなくもない」と言えないことは、「等しい」と「等しくない」との間に中間帯がないことを示す。このような性質を持つ形容詞を非段階的形容詞と言う。先に挙げた「大きい、小さい」は、「この家は大きくもないし小さくもない」と言える。これは、「大きい」と「小さい」という反意語対が、中間帯があるスケール構造を持つことを示す。このような反意語対を形成する形容詞を段階的形容詞(の下位類である開放スケール形容詞)と言う。したがって、被修飾句の形容詞のスケール構造から、非段階的形容詞を修飾しうる「完全に」「ほぼ」のような副詞と、段階的形容詞を修飾する「とても」「かなり」のような副詞に分類できる。段階的形容詞の中には、「平らな」のようにスケール上に最大極点を持つ閉鎖スケール形容詞がある。この種の形容詞は、「とても、かなり、完全に、ほぼ」から修飾される。 動詞を語彙分解する、或いは、動詞を統語構造で派生する立場で考えると、動詞のroootの(非)段階性が動詞の(非)限界性をある程度予測する。さらに、言語は、rootの(非)段階性を重視する言語とそうでない言語に類型化される。
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