近世京都における漢語アクセントについて (1)二字漢語の前部が去声字の場合(漢音は上声全濁字の場合も)、その漢語アクセントは低起式になり、逆に漢語アクセントが低起式ならば、その前部の漢字声調は去声である。 (2)二字3拍漢語におけるHHL>HLLの変化は前部2拍のものよりも、前部1拍のものに先行した可能性が高い。 (3)前部2拍入声字の二字3拍漢語において、近世に低起式アクセントであるものは、入声韻尾が独立する以前に「アクセントの体系変化」を経た可能性を示唆している。 (4)前部が数宇の漢語や並立語・対立語の漢語には、その前部成素のアクセントを生かすものがある。 同じく複合名詞のアクセントについて (5)後部2拍の複合名詞(4拍・5拍)は『平家正節』<口説・白声>においてアクセント型を特定できるものが222語あり、そのうち4拍語は180語、5拍語は42語である。 (6)後部2拍の複合名詞(4拍語)の場合は、前部成素中にアクセントの下がり目のあるH1型の語が10%、境界部にあるH2型が35.6%、後部成素中にあるH3型が27.2%、高平のHO型が22.2%であり、低起式はあわせて5%である。 (7)後部2拍の複合名詞(5拍語)の場合はすべて高起式で、前部成素中が16.7%程度、境界が21.4%、後部成素中が31%、高平のHO型が同じく31%である。 (8)後部3拍の複合名詞(5拍)は、境界型のH2型の語が53.4%でもっとも多く、次いで後部型のH4型が34.5%である。
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