抄物は日本語研究資料として価値が高いにもかかわらず、学界において利用されている資料はほんの一部にとどまっている。本研究は、抄物を発掘・調査し、伝存する抄物の総目録を完成して、日本語研究に資せんとするものである。平成17年度においては次の成果を得た。 1、今年度の現地調査 お茶の水図書館・宮内庁書陵部・国立公文書館・東京都立中央図書館・建仁寺大中院・叡山文庫・高山寺・国際日本文化研究センター・阪本龍門文庫・新潟大学附属図書館等において新しい抄物を発掘し、また調査不十分な抄物を再調査した。 2、資料性の解明 写本・古活字版・整版の、それぞれの抄物の資料的性格について考察した。特に、『中華若木詩抄』古活字版の誤植と印刷現場におげる活字の配列、『四部録抄』整版諸版の関係と室町末江戸初期の関東における出版活動、五山版と宋・元・明版への書き入れ抄の日本語研究資料としての価値、などについて考察した。それらの一部については、お茶の水図書館において、「抄物の整版から-東西方言の違いは、いつ、なぜ生じたか-」「成簣堂文庫所蔵の五山版から-中世における中国文化受容の一面-」と題して2回研究発表を行った。 3、今年度の目録作成 新しく発掘・調査した抄物を、既に作成できている目録の部分については組み込んだ。進行中の仏書に対する抄物目録の作成を進めた。
|