研究基盤整備年度である17年度は、本研究が依拠すべき理論的基盤に関わる基礎的研究、個別テーマの基礎的研究、文献・研究情報の収集および整理に取り組み、次年度以降の発展的研究の土台作りを行った。 その成果は、金子(2006)「英語における時制解釈の統語論・意味論のインターフェイス」として発表した。同論文では、Reichenbach時制理論を修正・拡張した時制解釈システムを提案し、時を表す付加詞の解釈における統語論と意味論のインターフェイスについて考察した。時制構造を構成する基本要素である評価時EvT、指示時RT、および事象時ETは、統語構造で可視的な要素として扱われる。また、時制構造は、統語派生において、機能範疇主要部(TP主要部、ModP主要部、PerfP主要部)がもつ指定情報が得られる各時点で、漸次的に構築されて行く。これらの二つの点で、この時制解釈システムには統語構造が大きく関与する。さらに、時の付加詞の解釈においても、付加詞の修飾対象の統語構造における位置が決定的役割を果たすことを論じた。また、付加詞の解釈には、統語構造上の局所性に依拠する解釈原理が適用されることを論じた。さらに、時の付加詞の特定性(specificity)に関わる解釈特性は、量化構造の核作用域・制限部の区別(Diesing(1992))と、本論文で提案された付加詞の解釈原理の相互作用の帰結として説明されることを論じた。 あわせて、基本図書、未出版論文、およびデータの収集に努めるとともに、データベース化に備えて、ソフトウエア等の導入を行った。
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