本年度は、前年度に整備された研究基盤を土台として新たな方向への研究拡充を行い、理論的基盤研究、個別テーマ研究、文献・研究情報の収集および整理を拡充し、平成19年度の研究総括へ向けての態勢を整えた。 〔理論的基盤研究〕前年度の研究を発展的に継続し、特にReinhart(2006)の議論を基盤として、派生のサイクルをめぐる統語部門・意味部門・音韻部門の相関関係を中心的に考察した。 〔実証的各論研究〕前年度のテーマ研究を発展的に継続するとともに、それぞれのテーマ研究から得られる成果の有機的統合に向けて準備を行った。特に、英語の命令文、仮定法現在節、仮定法過去節における時制解釈を手がかりに、機能範疇と付加詞表現の相互作用、付加詞のif節の内部特性を考察し、金子(2007a)として発表した。同論文では、これらの構文に固有の特性は、一般的時制解釈システムと、これらの構文に関わる機能範疇等の特性、および付加詞解釈に課される一般的条件の相互作用として説明されることを示した。また、節構造拡張現象の中核をなす埋め込み現象、および機能範疇が深く関与する削除現象が、学習文法でいかに取り扱われているかを考察し、金子(2007b)として発表した。同論文では、現行の標準的学習文法では、範疇と文法機能の混同をはじめとする様々な問題が含まれていることを指摘し、それらの問題を克服するためのいくつかの提案を行った。 〔文献・研究情報の収集および整理〕前年度導入したデータベース作成ソフトウェアを活用し、文献情報、研究資料、学術文献のデータベース化を進めており、現在もデータの拡充に努めている。
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