本年度は、前年度までに整備・拡充された基盤を土台として、理論的基盤研究、個別テーマ研究、文献・研究情報の収集および整理をさらに進め、それらの成果を統合して研究を総括し、研究成果を報告書としてまとめた。 〔理論的基盤研究〕 本年は、付加詞の統語構造への導入様式を考察した。その成果をKaneko(2008a)として発表し、付加詞は、最大投射に付加される構造と、中間投射に付加される構造の両方が可能であることを論じ、Chomsky(1985)のBare Phrase Structure理論を採用すると、Merge操作を適用する時点では、いずれの場合にも最大投射を標的とする操作と見なすことができるので、統一的な分析が可能であることを示した。 〔実証的各論研究〕 各論研究としては、Diesing(1992)で観察された、法助動詞を伴う文に生起する無冠詞複数形主語の解釈を分析し、その成果をKaneko(2008b)として発表した。そこでは、Diesing(1992)の分析が妥当ではないことを示し、Kaneko(1999)の法助動詞文の分析に基づいて、Chierchia(1995)において個体レベル述語文およびステージレベル述語文に対して提案された分析を修正した機能範疇構造と、付加詞が演算子の制限要素となる場合の解釈原理を提案し、Diesing(1992)で観察されたすべての解釈が説明されることを論じた。 〔文献・研究情報の収集および整理〕 今年度も、文献の収集と整理、人的交流による研究情報の収集を行うとともに、前年度に構築した文献情報、研究資料、研究成果のデータベースの拡充を継続した。研究者交流の成果は、金子他(編)(2008)として発表した。
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