本研究の目的は、自然言語の統語構造における平行的多重性の存在を実証的に検証し、そのような構造の多重性自体を明確に捉え、適切な範囲でそれを可能とする文法理論を構築するとともに、その多重性が意味構造とどのように関係するのかを明らかにすることにある。 今年度は3年計画の2年目として、これまでの理論とデータの収集・整理・検討を続けるとともに、具体的な構文について文法の拡張という観点からその派生関係を考察した。具体的には、生成文法においてこれまでなされてきた研究の中から、特に本研究の対象である構造の不確定性あるいはある性質に基づいた文法の拡張に関連した統語構造に関する記述を抽出整理し、その理論的・経験的問題点を明確化するよう試みた。また、現代英語の実際の言語資料により、本研究に関連し記述・説明されるべき種々の事実関係をできるだけ詳細に調査した。 今年度の具体的成果としては、擬似関係節を含め、大きく関係節・分裂文全体を含む大きな構文グループについて、言語習得過程で起こることを通じて互いに何らかの形で関係し合っている、また、子どもの言語習得においてその構文の初期段階で起こったことが、最終的に獲得された大人の文法における様々な部分に影響を及ぼしている、ということを明らかにした。しかも、そこには基本的なものから派生的な変種へという拡張の関係がある。さらに言語獲得の過程で先に現れたものが、それより後になって現れたものよりも、最終的に出てくる大人の文法から見れば、必ずしも基本的なものとは言えない、という視点を付け加えた。
|