研究課題
基盤研究(C)
現代英語の'sによって標示される属格形については、先行研究において、Abney(1987)のDP分析(DP analysis)が可能な例と、Taylor(1996)の複合語分析(compound analysis)が可能な例と少なくとも2種類があることが知られている。本年度は英語の属格の統語構造に関する理論的研究を進めると同時に、平成17年7月にオーストラリアにおいてアンケート調査を実施した。その結果、暫定的に次の結論に至っている。(1)DP分析や複合語分析がなされる属格表現の他に、Dの右側に付加される後位限定詞の一種として分析される時間・場所名詞属格と、形容詞修飾語としてN'に付加される度量名詞属格とが現代英語には存在する。イディオム属格と価値や量の属格も複合語の一種として分析することができる。(2)現代英語の属格名詞は主要部名詞の広い意味での修飾語が現れる位置とほぼ合致しており、属格名詞は恣意的にあちこちの位置に現れているのではない。現代英語には前位限定詞として分類される属格は存在しないが、その候補となる可能性があるのは後期中英語から初期近代英語にかけて現れたhis属格である。こうした結論に至ることができたのは、平成17年度だけでなく、本科学研究費補助金を得る以前から海外アンケート調査をしてきたためであるが、まだデータが不足しており、上記2つの主張を十分に裏付けるところまではきていない。来年度以降さらに調査を継続し、この2つだけでなく他の論点にもかかわるデータを蓄積していきたい。
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English Linguistics, The English Linguistics Society of Japan vol.23, No.1
ページ: 58-85
Journal of the School of Letters, Nagoya University Vol.1
ページ: 71-89
JELS、日本英語学会 23号(印刷中)