研究概要 |
言語における移動現象のうち、WH移動(疑問文、関係節、話題化構文などにける移動)と名詞句移動(受身や繰上げ構文の移動)の再構築現象について研究を行った。特に、この分野において論争となっている束縛理論の適用のタイミングの問題について考察し、二つの研究論文をまとめた。一つの研究論文では、再構築効果との関わりから、束縛理論が文を派生するシステムの中で、いつどこに適用されるかという点について対立する研究を比較検討し、Chomsky(1995)などで提案されている、論理形式における束縛理論の適用を支持する論拠を展開した。もう一つの研究論文では、この立場に矛盾する可能性のあるChomsky(2000,2001,2004)などのフェイズ理論に基づく再構築現象の先行分析を検討し、その問題の所在を明らかにしようと試みた。今後も再構築現象について課題となっている問題を追求し、トップダウン式の構造構築を支持するべくさらなる研究を行う。そのためには、データの収集が何よりも重要であることを再認識したため、さまざまな再構築構文の言語事実とそれに関する先行研究の整理、および、最新のChomsky理論の動向を把握するため、国内外の学会やそれが主催する夏期講習に参加し、入手が難しい資料を多く収集し、さらに、さまざまな研究者との情報交換を行った。さらに、このようにして収集したデータをすぐに検索できるようにするために、パーソナル・コンピュータおよび、スキャナ、pdfファイル作成ソフトウェア、保存のために大型のハードディスク、CD-RWなどを揃えて、電子文書化を進めている。
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