研究概要 |
内田と松井は他の3名と共に、関連性理論の最新の研究書であるRobyn Carston, Thoughts and Utterances : The Pragmatics of Explicit Communicationを翻訳中であるが、その過程での成果の一端がreview articleのUchida(2005)となっている。そこではいくつかの論点と共に日本語における'underdeterminacy(決定不十分性)'にも触れ、今まで注目されてこなかった現象にも言及している。また、吉村も独自に英文学会から同書のreviewを依頼され、Yoshimura,(2006)として公刊している。 また、内田(2005)ではメタ表象を引用現象に適用し、いわゆる自由間接話法の分析に新しい視点を導入した。吉村(2005)はメタ現象のひとつであるメタ否定をめぐる論争についてこれまでの豊富な研究を背景にして論じたものである。さらに、松井の2005年のふたつの論文は子どもの「だって」の使い方に焦点を当てながらtheory of mindの視点から掘り下げたものである。このような観点からの日本語の分析ははじめてである。 2005年10月25日には、研究打ち合わせの日程に合わせて、KRG(関西relevanceグループ)との共催で研究発表会を開き、それを公開した。2005年の研究業績にかかわる松井の発表のほか、周琳(奈良女子大学博士後期課程:中国語の接続詞の関連性理論による分析の検証)と笹本涼子(イギリスsalford大学:「やはり」と「結局」の関連性理論による分析)の発表を聞いた。本研究の当事者3名相互の議論のほかに、学外の出席者からも積極的な質疑応答があり、公開したことは成功であった。 そのほか、2005年から2006年にかけて、研究代表者、研究分担者はそれぞれ、英語学会、言語学会、英文学会、語用論学会、英語語法文法学会、日本語文法学会、など関係学会に積極的に参加し、研究課題に関する口頭発表に出席すると同時に、資料等の収集に努めた。
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