研究概要 |
平成19年度は,「語学と文学の「接点」から「共有」への深化:18世紀に辿る小説の言語を媒介として」を研究課題とする科学研究費の交付を受けた最終年度である。平成18年度には,脇本と福永は同一の文学テキストを英語文献学と文学の視点を用いて学際的な共同研究を行ったが,19年度には,脇本は18世紀の代表的作家であるSamuel Richarsonの作品における「悪態語」を中心に研究を行った。各作品に見られる特徴的な悪態語を明らかにすると共に,Oxford English DictionaryやWrightの方言辞典,Partridgeの俗語辞書を用い,それぞれの語句の意味変遷を,歴史的発達の過程から辿っていった。福永は,平成19年度には,この共同研究から得た成果を生かして,18世紀古典主義を代表するゴールドスミスのThe Vicar of Wakefield,19世紀後半を代表するジョージ・エリオットのMiddlemarch,20世紀初頭のモダニズムを代表するヴァージニア・ウルフの短編小説"The Mark on the Wall"の文体を分析した。これによって,田園イングランドのが都市化と産業化によって変容を迫られたこと,ロマンティシズムと科学的世界観がきびすを接して広がり,詩人,小説家,批評家の心の風景が一変したこと,さらに,ダーウィニズムの感化で地球的時間の視野で人間を捉えなおす見方が国民精神に浸透して,論争を巻き起こしたことをテキストの言語事実から跡付けた。
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