研究概要 |
本研究は、現在の英語の体系を完成させるに至った最終的段階と言える時期の英語の語彙的・語法的・統語的特徴を記述し、現代英語の体系の成立過程、特にそのファイナルステージを実証的に明らかにするものである。英語史上、近代英語後期と呼ばれる、18世紀から19世紀の時代の英語の姿を探る。まず、言語資料として、18世紀に急速に発達した散文文学である小説、特に女流作家に注目し、当時の女性の英語を分析対象とする。さらに作家が個人として書いた書簡や手記等の英語も分析の対象とし、レジスターによる文体の相違を探る。 本年度の実績・成果について、文法・語法に関連して二点、また、文構造とパンクチュエーションにおけるテクストの異同に関連して一点、取り上げ以下にまとめる。 まず、文法・語法について、1)時制とアスペクトに着目し、通時的視点を含めた分析・考察を行った。その結果を山口大学英語学研究会において、'Spoken grammar : will / be going to, be -ing'と題して発表した。2)受動態に着目し、通時的視点によるその発達を踏まえて文体的特徴を考察し、現代英語への関連性を意識した取り扱いによる受動態の特徴をまとめ、「英文法の実際とその教授法を考える:受動態の特徴と指導上の留意点」(共著)において、貢献した。この論文は英語学と英語教育の分野の研究に携わる著者による共著であり、通時的視点が現代英語また現代の英語教育へも示唆を与えることを示すものでもある。 3月にオックスフォード大学ボドレアン図書館にて、18世紀の文法書・後期近代英語期の散文文学作品の各エディション、その他の関連資料を閲覧した。中でも、「文構造とパンクチュエーションの用法」に注目し、文学作品に関しては、複数のエディションについて、それらを時代ごとに体系的に比較検討し、テクストの異同についての調査を行っており、当時の編集の方針や作家と編集者の関係等について考察している。
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