本研究は、現在の英語の体系を完成させるに至った最終的段階と言える時期の英語の語彙的・語法的・統語的特徴を記述し、現代英語の体系の成立過程、特にそのファイナルステージを実証的に明らかにするものである。英語史上、近代英語後期と呼ばれる、18世紀から19世紀の時代の英語の姿を探るべく、言語資料として、この時期に急速に発達した散文文学である小説、特に女流作家に注目し、当時の女性の英語を分析対象とした。 語法・統語面で、時制とアスペクトに着目し、通時的視点を含めた分析・考察を行った。進行形を中心としたアスペクト表現の近代英語から現代英語における一般的な特徴をまとめた。また、受動態の特徴について通時的視点による考察を踏まえ、現代英語への関連性を意識した取り扱いによりまとめ、通時的視点が現代英語また現代の英語教育へも示唆を与えることも示した。 文学作品に関しては、複数のエディションについて、それらを時代ごとに体系的に比較検討し、テクストの異同についての調査を行っており、当時の編集の方針や作家と編集者の関係等について考察した。 18-19世紀という時代の社会背景的な状況についても調査し、社会言語学的視点を取り入れる一方、言語の通時的な変化をふまえ、小説の文体について考察した。小説というジャンルが充実に向かう時代としての文体的特徴に関して、18世紀の書簡体小説の流れを汲む時代の代表的女流作家オースティンの作品における書簡の位置づけを分析し、小説において書簡がどのように組み込まれ、また、そこでどのような言語・文体が用いられているか、さらに、その効果について考察した。当時の語彙的・語法的・統語的特徴をまとめた。
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