研究概要 |
本研究課題では、談話連結詞の役割を、談話の連結や結束性よりも、語用論的推論に基づく解釈への指図であるとする関連性理論の枠組みを用いて、日英語の談話連結詞の手続き的意味と解釈に関わる語用論的推論について研究を行なっている。本年度の研究実績は以下のとおりである。 (1)日本語の話し言葉のデータとして6本のテレビドラマの脚本より、「実際に」「しかし、だが、でも」「それで」「だって」「ところで」の例文を収集した。また、British National Corpus(BNC)を用いて、英語の書き言葉のデータとして、after allの例文を主に収集した。 (2)英語の談話連結詞after allの用法の多義性について、次の2点の研究を行った。 1)after allの概念的意味を定義したのち、多義的な用法の関連性が解釈を導く手続きにあることを指摘した。こうした視点が日本語の談話連結詞にあたるか研究を継続したい。 2)BNCと18世紀の書簡集Letters of Delegates to Congressからのデータを比較し、その用法の優位性の変化について調べた。現在の英語では、字義どおりの意味よりも、譲歩や正当化などの話し手と聞き手の相互作用を表す意味(より主観的な意味)がその優位を占めていると結論づけた。これらの視点が日本語の場合にもあてはまるか、研究を継続したい。 (3)これらの研究の一部に関して、第9回国際語用論学会(International Pragmatics Conference, Italy)と第23回日本英語学会(於、九州大学)において成果発表を行なった。
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