学習英文法の種々の問題点のうち、英和辞典がその草創期からかかえる問題点をまとめた、『英和辞典の研究-英語認識改善のために』(開拓社)から出版した。また、その著書の中には、今後あらたに英和辞典や英語学習文法に含めるべき内容の提言を行った。この著書の中に記述した内容の主な事柄は、次のようなものである。 1.現在の英語学習文法やその根拠となる英和辞典の記述の諸問題を考える前に、英和辞典の歴史をたどった。 2.今現在使われている英和辞典や英語学習文法の問題点を洗い出し、それの背景を歴史的にたどる。その結果、 (1)多くの問題点は、大正から昭和初期に出された英和辞典に起源があること、 (2)さらに、それらの英和辞典の問題点は、イギリスのConcise Oxford English Dictionaryの初版(以下、COD1)に依存し、その後のCODの改定に必ずしも対応した記述になっていないこと、 (3)また、伝統的に英和辞典は外国の英語辞書に負うところが多く、上に述べたCOD以外にも、CODの親版であるThe Oxford English Dictionaryをはじめ、多くの辞書に書かれた古い英語の記述を現代英語のものとして記述していることにも深刻な問題となっていること、 などが明らかになった。 3.そのような欠点をもちながらも、英和辞典は改良を重ね、世界的なレベルからみてもすぐれた記述をしていることが知られている。それに対して、学習英文法として市販される英文法書や文法の問題集には問題点が多い。またさらに、学校で教える教師の英文法に対する認識そのものにも大きな問題があることを明らかにした。 4.その一方で、生きた英語は常に変化を起しており、生きた英語の認識のために、常に英語の記述をすすめなければならないことを、具体的に指摘した。
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