研究課題
今年度においては、平成17年度までの研究を発展させ、様々な文法現象の解明を目指すとともに、従来導き出してきた制約群の相互作用が通言語的に働くことを示し、分析の言語学的妥当性・一般性を追求することを目標として研究を進めた。考察した具体的な言語現象の一つとしては、不定詞節内のPROと語彙主語の分布を取りあげ、PROや語彙主語の格を制御するメカニズムに関する制約を抽出して、文法モデル内の格に関する体系を精緻化した。次に、これまで導き出してきた制約の相互作用が、英語及びその他の広域な言語現象を網羅できるか確認する作業を行った。具体的には、補文標識thatの分布とその言語差異を取り上げ、先ず、英語の方言、古英語、中英語、英語以外の言語に関する共時的・通時的言語資料と照らし合わせて、共通性と差異を検出した。その結果、補文標識that及びそれに相当する各言語の補文標識は、T-to-C移動していることが分かった。この結果を踏まえて、その移動を駆動する制約を帰納的に導き出し、その制約と経済性の原理の相互作用及びその階層差により、thatの生起に関する言語差異が説明できることを示した。また、ゼロthatの導入は初期近代英語の産物であり、それまではアイスランド語と同様補文に義務的にthatが生じるが、こうした通時的言語差異に対しても導き出した制約の階層差を仮定することで統一的説明を与えることが可能であることを示した。また、英語のthat・痕跡効果の出現や、二重詰めCOMPの消失といった通時的事例も、上記の制約の階層差と深く関連しており、制約の再階層化によってそれらの事実が説明できることが分かった。この研究成果は別紙平成18年度の研究成果にあるように、論文として纏めている。
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